Amazon Web Services ブログ
週刊AWS – 2025/4/28週
みなさん、こんにちは。ソリューションアーキテクトの戸塚です。今週も 週刊AWS をお届けします。
GW が明けましたね。私は趣味のパデルに没頭していました。連休中にもAWSアップデートが続いていて、この週は Amazon Q Developer まわりのアップデートが多かった印象です。AI 関連のイベントが5月は多く開催される予定で、こちらの Blog にまとまっています。ぜひ、ご参加ください。
それでは、先週の主なアップデートについて振り返っていきましょう。
2025年4月28日週の主要なアップデート
- 4/28(月)
- AWS Client VPN でクライアントルートの強制適用がサポートされました
AWS Client VPN に新機能が追加され、デバイスのネットワークルートを監視と、VPN トラフィックの漏洩を防止によるリモートアクセスのセキュリティを強化が可能となりました。この機能は、設定された内容に従って VPN トンネルを介してトラフィックが確実に流れるように、ユーザーのデバイスのルーティングテーブルを継続的に追跡します。 - Writer の Palmyra X5 および X4 モデルが Amazon Bedrock で利用可能に
Writer 社の高性能な基盤モデルである Palmyra X5 と X4 が、Amazon Bedrock で利用可能になりました。これは、Writer 社のモデルを完全マネージド型のサーバーレスモデルとして提供する初めてのクラウドプロバイダーとなります。これらのモデルは Stanford の HELM ベンチマークでトップランクを獲得しており、高度な推論や複数ステップのツール呼び出し、組み込みの RAG (検索拡張生成) などの複雑なタスクを得意としています。現在、Writer 社の Palmyra モデルは US West (オレゴン) で利用可能です。詳細は、こちらのブログもご参照ください。 - Amazon CloudFront での HTTP 検証による公開証明書の自動化
AWS Certificate Manager (ACM) と Amazon CloudFront において、HTTP の検証済みパブリック証明書の自動化機能が発表されました。この新機能により、CloudFront をご利用のお客様は、新しい CloudFront のコンテンツ配信アプリケーションを作成する際に、チェックボックスを選択するだけで TLS 通信に必要なパブリック証明書を取得できるようになりました。ACM と CloudFront が連携して、必要な公開証明書の要求、発行、CloudFront との関連付けを自動的に行います。
- AWS Client VPN でクライアントルートの強制適用がサポートされました
- 4/29(火)
- AWS Amplify がデータシーディングを導入
AWS Amplify にデータシーディング機能が追加されました。この機能により、Amazon Cognito、AWS AppSync、Amazon DynamoDB、Amazon S3 といった複数のサービスにまたがるテストデータの作成が容易になります。シーディングとは、アプリケーションの開発やテストに必要なサンプルデータを自動的に作成することを指します。これまで開発者は、認証が必要なリソースをテストする際に、テストユーザーの作成や認証の設定を手動で行う必要がありました。新機能では、API やコマンドラインインターフェース (CLI) を使用して、テストユーザーの作成から関連リソースの設定まで、プログラムで自動的に行えるようになります。 - Amazon Q Developer CLI が Model Context Protocol (MCP) をサポート
Amazon Q Developer CLI が Model Context Protocol (MCP) に対応しました。Amazon Q Developer CLI は、開発者向けの AWS が提供するコマンドラインツールです。今回の対応により、開発者はより豊かなコンテキストを活用した開発作業が可能になりました。MCP は AI モデルが外部ツールやデータソース、API に安全かつ構造化された方法でアクセスする方法を標準化するオープンプロトコルです。これまでは Amazon Q Developer CLI でネイティブに利用可能なツールのみを使用して、コード生成や開発作業の実行を支援していました。MCP ツールのサポートにより、AWS が事前に用意した多数の統合機能や、標準入出力 (stdio) トランスポート層をサポートする MCP サーバーをツールとして Q Developer CLI に統合できるようになりました。これにより、ネイティブツールと MCP サーバーベースのツールを組み合わせたタスクを実行することで、より状況に応じたカスタマイズされた応答が可能になります。詳しくはこちらの Blog もご参照ください。 - AWS Budgets が追加のコスト指標とフィルタリング機能をサポート
AWS Budgets (予算管理サービス) に、コスト管理をより柔軟に行える新機能が追加されました。この更新により、クラウドコストの追跡と管理方法が大幅に改善されます。新しく追加された機能では、割引後のコストを監視できる「net unblended costs (正味未調整コスト)」や「net amortized costs (正味償却コスト)」といった新しいコスト指標での予算作成が可能になりました。また、予算作成時に特定の項目を除外することができ、Cost Explorer で使用される「reservation applied usage (予約インスタンス適用使用量)」「Savings Plan Upfront Fee (Savings Plan 前払い料金)」「Savings Plan Covered Usage (Savings Plan 対象使用量)」などのチャージタイプにも対応しています。これらの新機能により、自動適用される割引や高度なフィルタリング機能を活用して、アプリケーション、チーム、またはコストセンターの実際のコストに対する予算管理が可能になります。
- AWS Amplify がデータシーディングを導入
- 4/30(水)
- AWS Clean Rooms で複数の結果受信者をコラボレーションでサポート
AWS Clean Rooms の新機能として、複数のコラボレーションメンバーが分析結果を受け取れるようになりました。この機能強化により、Spark SQL を使用したクエリの分析結果を、複数のメンバーが直接受け取ることが可能になります。これまでは追加の監査メカニズムが必要でしたが、その必要性がなくなり、使いやすさと透明性が向上しました。具体的な使用例として、メディアパブリッシャーと広告主のコラボレーションでは、パブリッシャーが共有データセットに対してクエリを実行し、その結果を両者の指定した Amazon S3 ロケーションに自動的に送信して検証することができます。 - Amazon SageMaker の Visual ETL とクエリエディタのスケジューリング機能が統合
Amazon SageMaker の Visual ETL とクエリエディタに対して、スケジューリング機能が統合されました。この新機能により、データ処理やクエリの実行を簡単にスケジュール設定できるようになりました。Amazon SageMaker の次世代バージョンは、データ、分析、AI を一元管理する中心的なプラットフォームとなっており、SageMaker Unified Studio という単一の開発環境を提供しています。Visual ETL は、ドラッグアンドドロップのインターフェースを使用して ETL フローを構築し、Amazon Q を活用してフローを作成できる機能です。また、クエリエディタツールでは、クエリの作成、実行、結果の確認、チームとの共有が可能です。 - 複雑なタスクとモデル蒸留の教師に最適な最高性能モデル Amazon Nova Premier を発表
Amazon が新しい大規模言語モデル「Nova Premier」を発表しました。これは Amazon の中で最も高性能なマルチモーダル基盤モデルとなります。Nova Premier は、長文ドキュメント、動画、大規模なコードベースの処理、そして複数のステップを必要とする作業の実行などの複雑なタスクを処理できます。また、Amazon Bedrock Model Distillation と組み合わせることで、特定のニーズに合わせたカスタムモデルを作成することもできます。Nova Premier はUS East (バージニア)、US East (オハイオ)、クロスリージョン推論の US West (オレゴン)で、Amazon Bedrock から利用可能です。
- AWS Clean Rooms で複数の結果受信者をコラボレーションでサポート
- 5/1(木)
- Amazon Q Developer が IDE 内で新しいエージェント型のコーディング体験を発表
Amazon Q Developer の IDE 内での新しいエージェント型コーディング体験が発表されました。この新機能は、ソフトウェア開発の方法を大きく変革するものです。自然言語を理解し、複雑なワークフローをスムーズに実行できる新しいコーディング体験を提供します。この新機能の特徴として、Q Developer はコードの提案だけでなく、ファイルの修正、コード差分の生成、コマンドの実行などを自然言語による指示で行うことができます。また、透明性のある推論プロセスにより、Q Developer があなたの要件をどのように解釈し、コードを変更しているかの思考プロセスを確認することができます。さらに、マルチターンの会話機能により、コードベース全体と開発セッション全体でコンテキストを維持しながら、双方向の対話が可能です。そして、細かな制御機能により、コードの自動修正を選択するか、ステップバイステップでのレビューと確認を行うかを選択できます。 - Amazon Bedrock モデルディスティレーションが一般提供開始
Amazon Bedrock の Model Distillation が一般提供開始となりました。Model Distillation とは、より高性能なモデル (教師モデル) から、より軽量なモデル (生徒モデル) へ知識を転移させる技術です。この技術により、特定のユースケースにおいて、高速で費用対効果の高い生徒モデルを教師モデルと同等の性能で実現できます。今回の一般提供では、新しいモデルとして Amazon Nova Premier (教師モデル) と Nova Pro (生徒モデル)、Claude 3.5 Sonnet v2 (教師モデル)、Llama 3.3 70B (教師モデル) と Llama 3.2 1B/3B (生徒モデル) がサポートされました。Amazon Bedrock Model Distillation を使用することで、エージェントのユースケースにおける関数呼び出しの予測を、より小規模なモデルで正確に実行できるようになり、応答時間の大幅な短縮とコストの削減が可能になります。詳細は、こちらの Blog と製品ページをご参照ください。 - AWS がエネルギーデータインサイトのマネージド型サポートを発表
AWS Managed Service (AMS) を通じて Energy Data Insights (EDI) のマネージド型サポートを発表しました。これは、エネルギー業界のお客様が OSDU 標準に準拠した形で、地下データ管理プラットフォームを AWS 上で簡単に展開、管理、運用できるようにするサービスです。この発表により、AWS 上で EDI を自動的にデプロイでき、データ取り込みの所要時間を数週間から数時間に短縮し、最小限の手作業で地下データをインテリジェントに処理・整理することが可能になりました。EDI on AWS は従量課金制で、US East (バージニア北部)、US West (オレゴン)、アジアパシフィック (シンガポール)、アジアパシフィック (シドニー)、ヨーロッパ (アイルランド)、ヨーロッパ (パリ)、南アメリカ (サンパウロ) で利用可能です。詳細は製品ページをご参照ください。
- Amazon Q Developer が IDE 内で新しいエージェント型のコーディング体験を発表
- 5/2(金)
- Amazon Aurora と RDS 向けの新しいオープンソース AWS Advanced PostgreSQL ODBC ドライバーが利用可能に
AWS から、PostgreSQL データベース向けの新しい ODBC ドライバーが一般提供開始されました。このドライバーは Amazon RDS と Amazon Aurora PostgreSQL 互換エディションのデータベースクラスターで利用できます。このアップデートの重要なポイントは、フェイルオーバーやスイッチオーバーの時間が大幅に短縮され、従来のオープンソースドライバーと比べて数十秒かかっていた切り替え時間が一桁秒数まで改善されたことです。また、Aurora Limitless のサポートや、AWS Secrets Manager、AWS IAM、フェデレーテッドアイデンティティによる認証もサポートしています。
- Amazon Aurora と RDS 向けの新しいオープンソース AWS Advanced PostgreSQL ODBC ドライバーが利用可能に
それでは、また来週お会いしましょう!